第二十三章 FIELD

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やがて、 赤い影は行き止まりに辿り着いた。それまでフル稼働していた野性的な足が止まる。 「......」 目の前は山の斜面。かなりの急勾配だ。背後には銃を撃ちまくる狂気の男が迫って来ている。 バンッ、パンッ、パンッ! パンッ、パンッ、パンッ! 近付いて来る銃声を耳にして、赤い影はとうとう観念したのだろうか...... ゆっくりと後ろを振り返り、走り寄って来るその男の姿を、低い位置から鋭い目付きで睨み付ける。 そして、 赤い布を全身に巻き付けたその者は、 奇妙な声を立ち上げながら、 男に向かって猛突進を開始した。 「ブヒー、ブヒー!」 「なっ、なんだ?!」 若い男は余りの驚きに、銃を投げ飛ばし、思わず尻餅をつく。 そのすぐ横を、興奮した『イノシン』は、見事一直線に通過して行った。それは正に一瞬の出来事だった。 はぁ...... 参った。 危ないところだった...... でも何で.... .. イノシンが赤い服着てたんだ? 訳が解らん。 そう言えば...... 他の3人は一体どこ行っちまったんだ? さっきから姿が見えないようだが...... 今更のように他の者達の事を思い出す若い男。しかし思い出すのが遅過ぎた。 やがて、背後から3人分の足音が...... ザッ、ザッ、ザッ...... ザッ、ザッ、ザッ...... おう、やっと追い付いて来たか...... 安堵の表情を浮かべ、ゆっくりと振り返る。 するとそこには、確かに3つの影。 なぜだか揃ってニタニタ笑っている。 やがて銃を構えた1人が口を開く。 「ゲームオーバーだ」 「!!!」 『インディアンの青年が、イノシン狩りに出掛けて尻餅をついた。尻が赤くなり走るのを止めた』 1つあった人形は0になり、そして誰もいなくなった。
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