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よしっ!
美緒は何やら決心を固めると、ゆっくりと顔を上げた。そして和らいだ表情で語り始める。
美緒たる者......
立場的に上位に立った時の和らいだ表情程怖いものは無い。
そんな美緒の傾向を知り尽くした圭一は、背筋に冷たいものが走る。
何か嫌な予感が......
暴走しなければいいんだが......
そんな圭一の不安を他所に、美緒は堰を切った。
パチパチパチ......
突然拍手を始める。
「あんたら本当に度胸あるわね。感心したわよ。あたし達なんかね、みんな臆病者だから絶対そんな事言えないわ。
そうかそうか......そんなに死にたいの......なるほどね......そうかそうか......はいはい。
よしっ解った。いい事思い付いたぞ!」
突然美緒の目が悪魔光りする。そして何やら内ポケットから銃を取り出した。
フッ、フッ、フッ......
人間の耳には聞こえないが、明らかに邪悪な超音波を発している。
「ブヒー!」
イノシンが突然興奮し始めた理由は誰にも解らない。
まさか、いきなり撃ち殺す?!
それじゃ本当に悪魔じゃねえか!
いやいや......さすがにそれは無いだろう。
落ち着け、落ち着け......
もう少し様子を見るとしよう......
1度腰を上げ掛けた圭一は、再び岩の椅子に腰を落とす。とは言え、暴走し始めたら、直ぐに押さえられる体勢は崩さなかった。
「なっ、なんだ?! い、いきなり撃つってつもりか? お、おう......上等だ! さ、さぁ、やれ! やれーって!」
若い男の勇ましい掛け声とは裏腹に、その表情は明らかに引き吊っていた。
いかなる境遇にあろうと、目の前に銃を突きつけられて、たじろかない者などは居ない。
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