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「ううう......」
初老の女性は下を向き、その身体をブルブルと震わせていた。すっかり臆病風に吹かれているようだ。どうでもいいが、中々銃を構える気配が無い。
しかし、時間は無限にある訳でも無かった。『もも』救出のタイムリミットは刻々と迫っている。
「さぁ、始めるわよ。はい、5、4、3......」
澄ました顔でいきなりカウントダウンを始める美緒。圭一は言われた通り、銃口を初老の女性の頭に向けた。明らかに迷いがある表情だ。
これ......もしこの女が引き金を引かなかったらどうするんだ?
俺の銃には弾が満タンに詰められてるんだぞ......
まさか撃つ訳にもいかんだろう。
ちょっと頼むよ、引き金引いてくれ......
焦っているのは、本人達よりむしろ圭一の方だった。
やがて女は観念したのか?
震える手で銃口をこめかみに当てた。
南無阿弥陀仏......
声には出さなくとも、口がそのように動いている。
そして......
「3、2、1.... .. 」
カチッ。
............
............
『ハズレ』だ。頭は吹き飛んでいない。
「はあ!」
初老の女性は、驚きとも安堵ともとれる実に奇妙な呻き声を上げた。肩の力が抜けて、身体はふにゃふにゃだ。白髪が増えない事を祈る。
一方、残った3人は一気に空気が重くなる。
マジかよ......
心の中では、凡そそんな風にぼやいているに違いない。
「あら、弾入って無かったようね、残念だわ。あなたは私達と同行。
それじゃ次!
弾が入っている確率は40パーセントに跳ね上がったわよ。はい、5、4、3......」
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