第二十三章 FIELD

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「ううう......」 初老の女性は下を向き、その身体をブルブルと震わせていた。すっかり臆病風に吹かれているようだ。どうでもいいが、中々銃を構える気配が無い。 しかし、時間は無限にある訳でも無かった。『もも』救出のタイムリミットは刻々と迫っている。 「さぁ、始めるわよ。はい、5、4、3......」 澄ました顔でいきなりカウントダウンを始める美緒。圭一は言われた通り、銃口を初老の女性の頭に向けた。明らかに迷いがある表情だ。 これ......もしこの女が引き金を引かなかったらどうするんだ? 俺の銃には弾が満タンに詰められてるんだぞ...... まさか撃つ訳にもいかんだろう。 ちょっと頼むよ、引き金引いてくれ...... 焦っているのは、本人達よりむしろ圭一の方だった。 やがて女は観念したのか? 震える手で銃口をこめかみに当てた。 南無阿弥陀仏...... 声には出さなくとも、口がそのように動いている。 そして...... 「3、2、1.... .. 」 カチッ。 ............ ............ 『ハズレ』だ。頭は吹き飛んでいない。 「はあ!」 初老の女性は、驚きとも安堵ともとれる実に奇妙な呻き声を上げた。肩の力が抜けて、身体はふにゃふにゃだ。白髪が増えない事を祈る。 一方、残った3人は一気に空気が重くなる。 マジかよ...... 心の中では、凡そそんな風にぼやいているに違いない。 「あら、弾入って無かったようね、残念だわ。あなたは私達と同行。 それじゃ次!  弾が入っている確率は40パーセントに跳ね上がったわよ。はい、5、4、3......」
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