第二十三章 FIELD

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もはやこれまで...... 若い男は目に涙をいっぱい溜めながら、ゆっくりと銃口を頭に当てた。 「3、2、1......」 そして、 覚悟を決める。 ............ ............ ............ カチッ。 弾は発射されない。 「あああ......」 若い男の全身から力が抜けていく。 そして股間からは人肌並みの温泉が沸き出し、足元には小さな池が出来上がっていた。白い湯気が立ち上がり、ほのかなアンモニア臭が鼻をつく。 男たる者としては、耐えがたい恥態と言わざるを得ない。見るも無惨だ。 死の恐怖と言うものを、嫌と言う程に味わった4人...... 皆、心打ちしだかれ、沈痛な表情を浮かべている。見ていて気の毒になる程だ。 圭一はそんな4人の姿を確認すると、ゆっくりと美緒の顔を見詰めた。 かなりきつい荒治療だったが、ここまでやらないと解っては貰えないだろう...... これでもう、自殺しようなんてバカな事は考えないんじゃないか...... さすがは美緒さん...... 銃に弾が入っていない事を気付かれるような素振りは全く見えなかった。マジで名役者だ。 この人程この仕事に向いている人はいないんじゃ無いか?  気付けば圭一は、尊敬の眼差しで美緒の顔を見詰めていた。
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