第二十四章 焼却炉

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「皆さんには、これから適材適所の場で人生最期の大仕事を行って貰います。 それまでは今暫くの間、狭い場所で不自由をお掛けしますがご辛抱下さい。中には途中で心変わりする方もおられますもので......ご理解下さい。 私からの話は以上になりますが、皆様から何かあればお伺いします。如何ですか?」 大門は白々しい程の笑顔で面々を順に見渡す。 その笑顔の裏側には、どれ程の邪心が潜んでいるのか...... 自殺志願者をつかまえて、言葉巧みに殺人を行わそうとしているのだ。隠された邪心の大きさは想像に有り余るものがあった。 「......」 そんな大門の問い掛けに対し4人は無言。今更聞く事も無い。 「宜しいでしょうか......それでは皆さん、今日はご苦労様でした。来る日に備えて十分に鋭気を養っておいて下さい。それではまた!」 大門は皆にそう言い放つと、スタスタと部屋を後にしていった。長居は無用。そんな意の現れなのだろう。 牢屋に押し込めて、鋭気を養えだと?!  何都合のいい事言ってんだ! 心の中では、そんな風に思っている4人ではあったが、敢えて文句を口にする者も居ない。 牢屋へと戻される事に、不満は無いのだろうか? それとも何か意図が有るのか? その本意は不明だ。 やがて...... 「さあ、『マンション』に戻るぞ。早くしろ!」 守護兵がまたしてもライフルで4人の背中をど突く。虫けらのような扱いだ。 もう慣れっこになってしまったのか? 特に何の抵抗も見せない4人だった。 因みに、 『マンション』 それは『牢屋』の俗称に他ならない。 『マンション』に戻る...... つまりそれは、 今から自分等を『牢屋』連れて行く。 と言う事になる。 更にもっと表現を変えると、 『わざわざ屍を築かなくても、ももの居る牢屋に、自分等をご丁寧に案内して下さる』 そう言っているのと同じだった。 初老の男と若い女は、互いに顔を見合わせ、小さく頷く。その目は爛々と輝いていた。
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