第二十四章 焼却炉

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「ここに居ると殺されるから、外で隠れてろ!って言うのは解るんだけど......なんで私達の服持ってっちゃうわけ? ダンボールが落ちて無かったら今頃凍死してるわよ」 若い女性が、再び吠える。 1月の中旬ともあれば、極寒の季節。服を剥がれて外に出れば寒くて当たり前だ。 「まあ、あの3人が迎えに来てくれるのをゆっくり待つとしよう。1度は死んだ身だ。失うものは無いしな」 「......」 「......」 「ブヒー!」 『FIELD』の片隅で身を寄せ合う3人と1匹。  ここから逃げ出そうにも、四方に張り巡らされた高いフェンスがそれを許してはくれない。  それまでは自殺志願者だったこの面々...... しかし今は違った。 『死ぬ事を考えてる暇があったら、死ぬ気で生きる事を考えろ!』 美緒の切った啖呵が、未だ頭から離れない。 信念が宿った言葉には、人の心を動かす力が有り、優しさが込められた暴言には、人を変える力が宿っていた。 マリアの心を持ったエマ。 阿修羅の心を持った美緒。 着ている衣は違えども、衣を剥ぎ取れば、そこに現れてくるものは揃って『優しさ』だった。 そんな優しさに触れた4人の背後には、もはや死神の姿は見えなかった。
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