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仮に致命傷にはならなかったとしても、怪我をした状態でこの大要塞から生きて抜け出す事は不可能だ。
もし1年前の美緒だったら、どんな犠牲を払ってでも、もも救出を最優先していたに違い無い。
しかし今の美緒は違った。
もしエマさんだったら......
彼らを見捨てる事など有り得ない!
壁にぶつかる度、いつもそんな風に自問自答する美緒だった。
美緒の追い掛けているもの......
それはエマの背中に他ならなかった。
エマにはエマしか出来ない事がある。
しかし......
美緒には美緒しか出来ない事があった。
やがて美緒は周囲を見渡す。
すると『監視室』なのだろうか? 大きな窓には自分の姿がくっきりと浮かび上がっている。
それを視界に捕らえた美緒は、
あら、結構セクシーじゃん......
何気にほくそ笑む。
実は合成ゴムに包まれた自分の姿を見るのは、今が初めてだった。
自分より若いあの娘の肌を再現した皮膚は、妙に張りがある。
またどちらかと言うと、スリムな部類に属する自分の身体に比べると、2サイズはカップが大きい。
下着は元のままなので、2つの胸の山は完全にはみ出ている状態だ。勿論はみ出ているのはゴムな訳だが、そうは見えないのが研究の成果だ。
しょうがない......
二人の命を守る為だ。
美緒の頭には、もも誘拐の実行犯『健介』の顔が浮かび上がっていた。
一体、何を始めようとしているのだろうか?
すると......
「あらやだ」
そう言いながら、突然よろけてリーダーと思われる守護兵の胸に抱きついた。
客観的に見れば、明らかに白々しいその行為も、抱き着かれた本人は当事者であるが故に、客観的に見る事が出来ない。
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