第二十四章 焼却炉

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仮に致命傷にはならなかったとしても、怪我をした状態でこの大要塞から生きて抜け出す事は不可能だ。 もし1年前の美緒だったら、どんな犠牲を払ってでも、もも救出を最優先していたに違い無い。 しかし今の美緒は違った。 もしエマさんだったら...... 彼らを見捨てる事など有り得ない! 壁にぶつかる度、いつもそんな風に自問自答する美緒だった。 美緒の追い掛けているもの...... それはエマの背中に他ならなかった。 エマにはエマしか出来ない事がある。 しかし...... 美緒には美緒しか出来ない事があった。 やがて美緒は周囲を見渡す。 すると『監視室』なのだろうか? 大きな窓には自分の姿がくっきりと浮かび上がっている。 それを視界に捕らえた美緒は、 あら、結構セクシーじゃん...... 何気にほくそ笑む。 実は合成ゴムに包まれた自分の姿を見るのは、今が初めてだった。 自分より若いあの娘の肌を再現した皮膚は、妙に張りがある。 またどちらかと言うと、スリムな部類に属する自分の身体に比べると、2サイズはカップが大きい。 下着は元のままなので、2つの胸の山は完全にはみ出ている状態だ。勿論はみ出ているのはゴムな訳だが、そうは見えないのが研究の成果だ。 しょうがない...... 二人の命を守る為だ。 美緒の頭には、もも誘拐の実行犯『健介』の顔が浮かび上がっていた。 一体、何を始めようとしているのだろうか? すると...... 「あらやだ」 そう言いながら、突然よろけてリーダーと思われる守護兵の胸に抱きついた。 客観的に見れば、明らかに白々しいその行為も、抱き着かれた本人は当事者であるが故に、客観的に見る事が出来ない。 
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