第二十四章 焼却炉

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 ※  ※  ※ 「先生、あれはなんでしゅか?」 窓の外に見える棒状の建築物を指差すもも。 先生と呼ばれたメガネの中年女性が、ももの問い掛けに笑顔で答える。 「あれはね、煙突って言うのよ。一番上の所から少し煙が出てるでしょう。昨日の『ゴミ』を燃やした時の煙がまだ残ってるのね」 「へえ、ゴミ燃やしてるんでしゅか。何の『ゴミ』なんだろう?」 ももは、ちょこんと首を曲げる。 「今日の夕方になれば、また燃やすから解るわよ。メラメラメラメラ燃えて、とても面白いのよ。あなたもきっと気に入ると思うわ」 「そうなんだ。もも楽しみ!」 「......」 『焼却炉』 それは『マンタ洞窟』の最北端。僅かながらに地上が望める唯一の場所だ。 今美緒達が居る『牢屋』からは果てしなく遠い。 敵を薙ぎ倒しながら、時間内にこの場所にやって来る事はもはや不可能と言えた。 7時間......残念ながらそれは絶望的な数字と言わざるを得ない。 美緒達は知らなかった。 『ピクニック』を前にして、早朝ももが別の場所に移動させられている事を...... それは正に致命的と言えた。 おかあさんに早く会いたいな...... 先生が明日には帰れるって言ってた...... おかあさんに会ったらいっぱい甘えちゃおう...... もも楽しみ。 えへっ...... 屈託の無い笑顔は今日も健在だ。 しかしそんなももの笑顔......美緒達が7時間以内に救出出来なければ、それが見納めとなる。残酷な話ではあるが......
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