第二十五章 絶望への道程

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カシャ。 焦げ茶色で統一された広さにして20畳程の応接室。 扉が静かに開く。 座れば尻が10センチは沈むであろう何ともゴージャスなソファに腰掛けた客人が、その音に気付き視線を上げた。 扉の先に姿を見せたのは、スラリと背の高い清楚な女性。 ダウンライトから発せられる淡いオレンジ色の光は、まだ乾き切っていないその女性の濡れた肌をチラチラと輝かせていた。首には深紅のタオルが掛けられ、そのタオルには、まだ水分が多分に含まれている。 「あんたもコロコロ人間使い分けて、忙しそうだな大門君......いや、これは失礼。龍貴さんだった。ハッ、ハッ、ハッ」 開口一番、そんな皮肉をぶちまけたこの客人は、下品な笑みを浮かべながら、肩をヒクヒク震わせていた。 上下真っ赤なスーツで身を固め、裸足のままで履かれたエナメル製の白い革靴には、その男の歪んだ顔が写し出されている。 その男の名は秋葉秀樹。 新党富士の総裁に他ならない。 ダウンライトから発せられる灯りは極限までその照度が落とされ、応接室と言うよりかは、むしろナイトパフと言った方が、この部屋のイメージが伝わり易いのかも知れない。 そしてよくよく見れば、この部屋には窓が一つも無かった。当たり前と言えば当たり前。ここは『マンタ洞窟』の中だから。
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