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「......」
そんな秀樹の挑発的第一声に対し、龍貴は全くの無反応。表情一つ変わらない。
やがて秀樹の正面に腰を下ろすと、過剰な程のゼスチャーで足を組み変えた。
その時、秀樹の目の前に曝け出された龍貴の足は、やたらと長く、そしてやたらと細く、そしてやたらと透き通るような色ツヤを見せていた。
思わず生唾を飲み込む秀樹。動揺を隠し切れない。
駆け引きは既に始まっていた。
それは正に龍貴の先制攻撃と言えよう。
すると、
「おい、ちょっと」
秀樹は龍貴の足では無く、首筋を見詰めている。
「何かしら?」
龍貴は怪訝な表情。
「ちゃんと風呂入ったのか? 首にまだゴムが付いてるぞ」
「......」
龍貴は無言で手鏡をその辺りに当ててみる。
秀樹の言った通り、首にはまだ落としきれていない『大門』が残っていた。
秀樹のカウンター炸裂だ。
しかし龍貴は、そんなゴム片を剥がそうともせずにいきなり口火を切った。
「『トロイの結末』が近づいて参りました。準備の程は如何に?」
「おお、いきなり来たねえ......フッ、フッ、フッ」
秀樹は二人の会話を楽しんでいるかのようにも見える。しかし龍貴に笑顔は無い。
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