第二十五章 絶望への道程

3/52
前へ
/1040ページ
次へ
「......」 そんな秀樹の挑発的第一声に対し、龍貴は全くの無反応。表情一つ変わらない。  やがて秀樹の正面に腰を下ろすと、過剰な程のゼスチャーで足を組み変えた。 その時、秀樹の目の前に曝け出された龍貴の足は、やたらと長く、そしてやたらと細く、そしてやたらと透き通るような色ツヤを見せていた。 思わず生唾を飲み込む秀樹。動揺を隠し切れない。 駆け引きは既に始まっていた。 それは正に龍貴の先制攻撃と言えよう。 すると、 「おい、ちょっと」 秀樹は龍貴の足では無く、首筋を見詰めている。 「何かしら?」 龍貴は怪訝な表情。 「ちゃんと風呂入ったのか? 首にまだゴムが付いてるぞ」 「......」 龍貴は無言で手鏡をその辺りに当ててみる。 秀樹の言った通り、首にはまだ落としきれていない『大門』が残っていた。 秀樹のカウンター炸裂だ。 しかし龍貴は、そんなゴム片を剥がそうともせずにいきなり口火を切った。 「『トロイの結末』が近づいて参りました。準備の程は如何に?」 「おお、いきなり来たねえ......フッ、フッ、フッ」 秀樹は二人の会話を楽しんでいるかのようにも見える。しかし龍貴に笑顔は無い。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加