第二十五章 絶望への道程

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やがて美緒は顔を上げ、向日葵のような満面の笑みを浮かべた。 その顔は、鬼でも悪魔でも無い。一途に一人の男を愛す乙女そのものの顔だった。 「私は大丈夫。身体ピンピンしてるから」 「そうか......なら......いいんだ」 「......」 「......」 ほんの数秒の沈黙が、1時間にも1日にも感じ取れてしまう。互いの心を思いやるが故の複雑な心理が交錯しているのであろう。 しかしここは、生死を分ける戦場であり、ましてや一刻を争うような状況だ。私的な欲情に心を囚われている場合では無かった。 「さぁ、行きましょう! ももを探さないと」 「そうだな。ここの牢屋のどこかに居るはずだ!」 美緒、圭一、博士、若い男の4人は、守護兵を牢屋に押し込め、しっかりと施錠した。取り敢えずこの場はこれでOKだ。 「よし、行こう!」 圭一は気持ち新たに掛け声を上げる。 「あ、ちょっと待って!」 美緒は何を思ったのか? 突然思い出したかのように『監視室』へと駆け込んで行った。 そして戻って来るや否や、 「はい、これ!」 見れば、2つの大きなリュックを両手に抱き抱えている。 それは2人がこの『マンタ洞窟』に潜入する際、持ち込んで来た万能リュックだった。リュックの中には武器弾薬、医薬品、その他諸々全てが収められたままだ。
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