366人が本棚に入れています
本棚に追加
「あがががが......」
何かを話そうとする守護兵。しかし顎がカタカタ音を鳴らずだけで、言葉にはならなかった。
バコンッ!
四方に血まみれの歯が吹き飛ぶ。
「ちゃんと言葉を話せ!」
バコンッ!
「ううううう......」
「精力だけは旺盛なんだろ!」
バコンッ!
バコンッ!
「てめえ、よくも美緒さんを!」
バコンッ! バコンッ! バコンッ!
バコンッ! バコンッ! バコンッ!
今や圭一の行動を制御しているものは『感情』のみ。野性動物となんら変わりは無かった。
コントロール不能となった圭一の拳は、左右両方から立て続けに人間サンドバッグを破壊し続ける。
守護兵は身体をダランとさせ、もはや2つの目は光を失い掛けていた。
「お、おい......もう止めてくれよ。このままじゃ......たっ、大将が......死んじゃうよ」
守護兵達は、リーダーの身を安ずるとも、止めに入る勇気などは無かった。
無心に殴り続ける圭一の顔は、もはや正気を失っている。目からは火花が飛び散り、頭からは湯気が立ち上がっていた。
バコンッ! バコンッ! バコンッ!
あまりの惨い仕打ちに、守護兵の一人がたまらず声を上げた。
「少女は最北の焼却塔だ! 明け方そっちに移動させられた。もういいだろう! 殴るの止めてくれよ......俺らの大将殺さないでくれよ!」
そう叫びながら、果敢にも圭一とリーダーの間に割って入ろうとした時だった。
自分よりも一歩早く、2人の間に身体を投げ出した者が!
そして、
バコンッ!
圭一の狂った拳は、その者の頬に見事クリティカルヒット!
そして、
カタカタカタ......
殴られた拍子に床に転がり落ちた物。
それは、
若い女のメガネだった。
ポタ、ポタ、ポタ......
殴られたその者の口から、血が垂れ落ちる。
最初のコメントを投稿しよう!