第二十五章 絶望への道程

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「あがががが......」 何かを話そうとする守護兵。しかし顎がカタカタ音を鳴らずだけで、言葉にはならなかった。 バコンッ! 四方に血まみれの歯が吹き飛ぶ。 「ちゃんと言葉を話せ!」 バコンッ! 「ううううう......」 「精力だけは旺盛なんだろ!」 バコンッ! バコンッ! 「てめえ、よくも美緒さんを!」 バコンッ! バコンッ! バコンッ! バコンッ! バコンッ! バコンッ! 今や圭一の行動を制御しているものは『感情』のみ。野性動物となんら変わりは無かった。 コントロール不能となった圭一の拳は、左右両方から立て続けに人間サンドバッグを破壊し続ける。 守護兵は身体をダランとさせ、もはや2つの目は光を失い掛けていた。 「お、おい......もう止めてくれよ。このままじゃ......たっ、大将が......死んじゃうよ」 守護兵達は、リーダーの身を安ずるとも、止めに入る勇気などは無かった。 無心に殴り続ける圭一の顔は、もはや正気を失っている。目からは火花が飛び散り、頭からは湯気が立ち上がっていた。 バコンッ! バコンッ! バコンッ! あまりの惨い仕打ちに、守護兵の一人がたまらず声を上げた。 「少女は最北の焼却塔だ! 明け方そっちに移動させられた。もういいだろう! 殴るの止めてくれよ......俺らの大将殺さないでくれよ!」 そう叫びながら、果敢にも圭一とリーダーの間に割って入ろうとした時だった。 自分よりも一歩早く、2人の間に身体を投げ出した者が! そして、 バコンッ! 圭一の狂った拳は、その者の頬に見事クリティカルヒット! そして、 カタカタカタ...... 殴られた拍子に床に転がり落ちた物。 それは、 若い女のメガネだった。 ポタ、ポタ、ポタ...... 殴られたその者の口から、血が垂れ落ちる。
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