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「な、なんで?!」
突如、現世に舞い戻った圭一の顔に血の気は無かった。ただその者の顔を、呆然と見詰める事しか出来ない。
やがてその者は、赤く腫れ上がった頬を歪めながら、床に落ちたメガネを摘まみ上げる。そしてゆっくりと口を開いた。
「私達は常に戦い続けている。命が狙われれば、敵を殺める事もあるでしょう。
しかし......無抵抗な人間を殺める事は、私達の仕事じゃない。
圭一さん......今のあなたは探偵として失格です」
素早く2人の間に割って入った者......
それは他でも無い。
美緒だった。
人間は誰でも過ちを犯す。それは万人に言える事。
しかし、取り返しのつく過ちも有れば、つかない過ちも有る。
如何なる理由が有ろうとも、無抵抗な人間を殺めればそれは『殺人』であり、犯罪者のレッテルを貼られる事となる。
美緒は圭一にそんなレッテルを貼らせたくは無かった。そんな強い気持ちが美緒の身体をつき動かしたに違いない。
美緒は口から流れる血を拭うと、ゆっくりと立ち上がった。
「美緒さん......俺......」
「さぁ、行きましょう。ももが待っています」
圭一の言葉を遮る美緒。
そして何事も無かったかのように歩き始める。
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