第二十五章 絶望への道程

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ミャア~~ 猫だった。 「なんだ......旅館の看板猫じゃん。あれ? 麗子さん、居ないぞ」 広い洋室の中は、もぬけの殻だった。よくよく見れば荷物も全て無くなっている。 これは少なくとも誘拐されたって感じじゃ無いな...... 間違い無く昨晩までは居たはず......って事は、夜中に抜け出したって事? 未来は訳が解らない。 「おい未来。麗子さんは起きたのか?」 向かいの大部屋から大声で問い掛けるマスター。 「麗子さん、居ないよ」 「えっ、居ないって?!」 「しかも、荷物も全部無くなってる」 未来は有りのままをマスターに伝えた。 「死んだ事になってんだぞ。一体何考えてんだあの人は?!」 マスターの顔が俄に曇りを見せる。 未来は中居が作ったおにぎりをテーブルの上に置いたまま、そそくさと大部屋に戻って来た。 「麗子さんどこ行っちゃったんでしょうかね? 命狙われてんのに......」 「まぁ、居ると疲れるから居なくなって良かったんじゃ無いか」 健介は何やらほくそえんでいる。 私はあんた達なんかとは、身分が違うのよ!......そんなオーラを、あからさまに放つ麗子が、目障りで仕方無かったのであろう。
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