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「グワァ、溺れる!」
「美緒さん大丈夫か?!」
「あたしは大丈夫」
溺れているのか、泳いでいるのか、殆ど区別がつかないような哀れな犬かきを披露する大作。
決して金槌と言う訳では無いが、重い万能リュックを背負い、沈没寸前のタイタニック号を演じる圭一。
万能リュックを背負ったまま、イルカの如く魚を追い抜いて行く美緒。
アップアップしながら、必死に美緒の背中を追い掛ける男性陣だった。
この地底湖、決して遠浅と言う訳では無かった。溺れ掛けている二人にとっては正に試練と言えた。
やがて3人は時間差ではあるが、何とか順に陸へと這い上がって行った。
死んでたまるか!
そんな意地の賜物と言えよう。
「取り敢えずは、一旦落ち着きましょう。ほら頑張って!」
息絶え絶えな二人を、クールな表情で鼓舞する美緒。
この差は一体何なのだろうか?......
因みに美緒は、スキューバダイビングのライセンス保有者で、海の中でも陸と同じ生活が出来るらしい。まぁ、本人が勝手にそう言っているだけではあるが。
幾分落ち着きを取り戻した3人は、石だらけの地面を歩き、大きな岩の影に身を落ち着ける。
本来であれば、暗黙の世界たる地底洞窟の中ではあるが、幸いにも要塞とも言える建物群から漏れる灯りのお陰で、辛うじて3人の視界を保ち得ていた。
「どうやら敵は追って来ないようだな」
圭一は肩で息をしながらも、安堵の表情を浮かべている。
「普通に考えれば、追って来るんじゃないかしら? 追って来ないとしたら、それなりの理由が有るからだと思う」
美緒は精密機械の如く思考を巡らせたる。
「例えば?」
大作が目を細めた。
「もしかして......博士が言ってた事か?」
圭一は、死ぬ前に博士が言っていた『あいつ』の事を思い出した。
『あいつと戦う位なら、守護兵と戦った方がましだ』
それは死ぬ前に博士が言い残した遺言とも言えた。
『あいつ』って何なんだ?
人なのか?
動物なのか?
それとも自然の驚異を言っているのか?
博士は既に死んでしまっている以上、知るよしも無かった。
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