第二十五章 絶望への道程

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「さっ、寒い......」 身体を擦りながら、ブルブル震える大作に対し、 「どこが寒いんだ?」 「暑いくらいよ」 「キュー、キュー」 へっちゃらな二人と、 一匹のカワウソだった。 「あら、博士来たのね」 「ほんとかい?!」 「キュー、キュー!」 建物群の外に一歩出てしまえば、そこは大自然の宝庫。カワウソ一匹くらい居た所で、別に不思議は無い。だがなぜこの場から離れないのか? それに関しては全くもって不明だ。 「研究を重ねてるだけあって、このゴムスーツは保温性が抜群だな。水も通さないし全然寒くないぞ。大体なんでお前は着てないんだ?」 イタズラ心を多分に含んだ笑顔で語る圭一。自殺志願者張本人である訳だから、変装する必要など有る訳が無い。 大作をからかって、ほんの少しの休息を楽しむ美緒と圭一だった。 しかし追っ手が来ないとは言え、時間か無限に有る訳でも無い。 直ぐに顔を引き締め、ライフルを肩へ掛け直す。そして心身共に臨戦態勢へと突入していった。 やがて美緒が満を持して口を開く。 「この先に何が待ち受けているのかは知らないけど、邪魔するものが居たら蹴散らすのみです!」 「おい坊主、解ったか? 蹴散らすんだぞ!」 「さっ、寒い......」 「キュー、キュー!」 寒すぎてそれどころでは無いようだ。 「さぁ、行きましょう!」
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