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「さっ、寒い......」
身体を擦りながら、ブルブル震える大作に対し、
「どこが寒いんだ?」
「暑いくらいよ」
「キュー、キュー」
へっちゃらな二人と、
一匹のカワウソだった。
「あら、博士来たのね」
「ほんとかい?!」
「キュー、キュー!」
建物群の外に一歩出てしまえば、そこは大自然の宝庫。カワウソ一匹くらい居た所で、別に不思議は無い。だがなぜこの場から離れないのか? それに関しては全くもって不明だ。
「研究を重ねてるだけあって、このゴムスーツは保温性が抜群だな。水も通さないし全然寒くないぞ。大体なんでお前は着てないんだ?」
イタズラ心を多分に含んだ笑顔で語る圭一。自殺志願者張本人である訳だから、変装する必要など有る訳が無い。
大作をからかって、ほんの少しの休息を楽しむ美緒と圭一だった。
しかし追っ手が来ないとは言え、時間か無限に有る訳でも無い。
直ぐに顔を引き締め、ライフルを肩へ掛け直す。そして心身共に臨戦態勢へと突入していった。
やがて美緒が満を持して口を開く。
「この先に何が待ち受けているのかは知らないけど、邪魔するものが居たら蹴散らすのみです!」
「おい坊主、解ったか? 蹴散らすんだぞ!」
「さっ、寒い......」
「キュー、キュー!」
寒すぎてそれどころでは無いようだ。
「さぁ、行きましょう!」
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