第二十五章 絶望への道程

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 ※  ※  ※ 「何か居るぞ。隠れろ!」 ただ事ならぬ物音をいち早く察知した圭一が、小声で皆に『CAUTION』を発令する。 ゴソッ、ゴソッ。 ゴソッ、ゴソッ。 音を立てぬよう、抜き足、差し足、忍び足。岩影へと素早く身を隠す圭一、美緒、大作の3人だった。 「なっ、何なんだ?」 恐れ戦く大作は、圭一の耳元で囁く。 「何だか解らんが、足音から察するにかなりでかそうだ。とにかく静かにしてろ。ここはやり過ごすのが得策だ」 ひそひそ声で返す圭一。岩壁に背中を当て神経を尖らせている。 「足音からすると、何か大きな動物っぽい気がするんだけど。例えば.......」 美緒がそこまで言い掛けた時だ。 ボコボコボコボコ...... 突然、胸を連打する音が響き渡り始めた。 「まさか......」 「ゴリラ......とか?」 「しっ、黙って!」 足音が、3人の隠れる岩のすぐ手前で停止。距離にして1メートルも離れていない。 思わずライフルの引き金に力が入る3人だった。 「...... 」 「.......」 「.......」 ピンと張り詰めた空気が辺りを包み込む。水を打ったような静けさだ。3人は息を止め、呼吸音すら打ち消した。 ドクン、ドクン...... ドクン、ドクン...... ドクン、ドクン...... 3人の鼓動音だけが、微かに響いて聞こえる。
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