第二十五章 絶望への道程

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「ゴリラって......弱点有るっけ?!」 前のめりになりながら、突っ走る圭一。 聞いても無駄だと解っていながら、聞かずにはいられない。 「無いわ」 「そうなのか?」 「そうよ」 木々をなぎ倒しながら、全速力で迫り来る真っ赤な目。 その距離は、見る見るうちに縮まっていく。 「ダメだ。もう走れない!」 気付けば、一番若いはずの大作が、一歩二歩と完全に遅れを取っているでは無いか! すると圭一が すかさず、 パンッ、パンッ、パンッ! ライフルの連射だ。 遺伝子操作された生物兵器に、銃など役に立たない事くらいは圭一も百も承知だ。 ちょっとでも足止め出来れば......そんな気持ちからの連射であった事は言うまでも無い。 しかし1年前と比べ、圭一らが進化しているのと同様に、生物兵器も格段に進化していた。その事を思い知らされるような一幕だった。 バサッ、バサッ、バサッ。 ゴリラは、重量級の身体にも関わらず、砂利を蹴り飛ばしながら見事なステップで銃弾を避けて行く。結局ほんの足止めにすらならなかった。 こうなっては、もはや大作の命も風前の灯火。 次の瞬間には、ゴリラの鋭い爪で切り刻まれるものと誰もが観念したその時だった。 ピィ~...... 一体何の音だ? 風の吹くような音にも聞こえるし、笛の音にも聞こえる。
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