第二十五章 絶望への道程

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「うぎゃー!」 頭を抱え、のどから血が出る程の雄叫びを上げた大作の前で、途端に動きを止めるゴリラ。 それはまるで電源が落ちたロボットのようだった。 ............ ............ ............ 意味不明の沈黙が辺りを包み込む。 見ればゴリラは完全にフリーズしていた。 「おい、大作! 何ボーッとしてんだ。早くこっち来いって!」 そんな圭一の叫び声に、ゴリラが気付いていない訳が無い。にも関わらず、ゴリラは構わず沈黙を続けている。 「ラ、ラッキー!」 大作は冷や汗を垂らしながら、ゴリラの足元をすり抜けて行く。エスケープ完了だ。 そして次の瞬間、 バンッ! なんと洞窟内に突如一発の銃声が轟き渡った。 「なっ、なんだ?!」 銃声は自分らの後方から聞こえて来たような気がする。 そしてその銃弾の飛んだ先は、なんと! ゴリラの眉間のど真ん中。 「グエッ!」 ゴリラは銃弾を避ける事はしなかった。そして額から血を吹き出し、その巨体は見事に崩れ落ちた。 バサッ。 一撃必殺だ。 既に事切れている事は、遠目で見ている圭一と美緒にも一目両全だった。 なぜなら、ゴリラの目は青く澄んでいた。 遺伝子操作された動物は、肉体が強化され、性格が獰猛になっている事に加え、人間がその行動を管理する為に、脳内チップが組み込まれている。 先程鳴り響いたピュ~と言う笛の音のような音は、脳内チップから脳に発せられる電気信号と同じような効果を、聴覚を通して脳に直接働き掛けたものと推測される。
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