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「何なんだ、このしつこい茎は?!」
バサッ、バサッ。
足をバタつかせ、振り払おうと試みる大作。
しかし一度絡み付いた茎は、一向にその力を緩めようとはしない。
それどころか、二本、三本と新たな茎が次々と大作の身体に絡み付き始めているでは無いか。
「おい、どうしたんだ? 大作の身体がいつの間に花の茎で見えなくなってるぞ」
「ちょっと待って! 花が......動いてる!」
見れば、それまで敷地一面に広がっていた無数の植物が、大作の回りに集まって来ているでは無いか。
ガサガサガサ!
ガサガサガサ!
「植物が移動してる! 足でも付いてるのか?」
「有り得ない! 動いたら植物じゃ無いでしょ!」
圭一と美緒は、目を疑うような光景を目の当たりにし、思わず感嘆の声を上げた。
「うわぁ! 花が、花が......口を開けてる!」
気付いた時には既に手遅れだった。
大作の身体はこの異様な集団に飲み込まれ、花びらの中心から飛び出した鋭い牙の餌食と化している。
ムシャ、ムシャ......
ムシャ、ムシャ......
大作の身体は無惨にも無数の牙に噛みきられ、既に五体を止めていなかった。実に残酷極まりの無い光景だ。
「さぁ、予定通りだ。この肉食植物はバカだから、獲物を見付けると、それしか見えなくなる。もっと手前の方ではぐれ者がいるかと思ってたが、全部ここに集まってくれてて助かった。食い終わる前に通り抜けるぞ」
涼しげな顔で解説を始める大地。
それに対し、圭一と美緒の二人は顔を紅潮させ、全身が怒りに震えていた。
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