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※ ※ ※
一方、自らが盾となり、珠(たまき)を2つの『アマゾネス』から守り通したエマはと言うと......
珠を背負い、鬱蒼とした森の中をひた走りに走るエマだった。
一刻も早くこの樹海を抜け出して、珠さんを病院に運ばなければ......
ハァ、ハァ、ハァ......
心臓は今にも爆発しそうだ。
布を圧し当てても、足の付け根を紐で縛っても、珠の足からは濁流の如く、血が流れ続けている。
針も糸も無いから止血も出来ない。
血液型が違うから輸血も出来ない。
珠の命は正に風前の灯火。
いつ魂が身体から飛び立ってもおかしくは無い状態だった。
すると、
「エ、エマさ......ん......」
背中から蚊の泣くような声が。
「珠さん。頑張れ! もうちょっとだからな!」
エマは、三途の川を渡り切ろうとしている珠を、必死に鼓舞した。
「降ろして......」
出ない声を無理矢理出しているのだろう。かすれ切った声が、今にも事切れそうな珠の身体を物語っていた。
エマは『降ろして』......
その一言で珠の全ての意を悟ったような気がした。
もう私は無理......
死ぬ前にどうしても話しておきたいの......
きっとその後には、そんな言葉が続いていたのだろう。決して声にはなっていなかったが......
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