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呆れた表情を浮かべながらも、その時エマはふと考えた。
もし、ポールがここで死んでいたら......
圭一も美緒も、そしてこのポールも、皆私を信じて、その命を投げ出してくれている訳だ。
私は『EMA探偵事務所』の代表であり、彼らの命を預かっていると言う事を、少し軽んじていたのでは無いか?
これまで何度も何度も、死地から生きて抜け出せて来れたのも、それはただ単に運が良かっただけの事。
それは既に通り過ぎた過去であって、これからも抜け出せるかどうかなどは解ったものでは無い。
もっと気を引き締めなければ......
慚愧に耐えないエマだった。
やっと身体が落ち着いて来たのだろうか、やがてポールは仰向けだったその身体を起こし始めた。
「大丈夫か? 一人で立ち上がれるか?」
エマは慌ててポールの身体を差さえ起こす。
「大丈夫デス。エマサンのキスで完全復活デス!」
「お、お、お、お、お前......意識無かったんじゃ......」
そう問い掛けながら、身体を震わすエマ。次の瞬間には一本背負が飛び出すかと、反射的に身を竦めるポール。
しかし、
「さぁ、あたしの肩に掴まれ。行くぞ」
優しかった。
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