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「解りマシタ、男ポール、死んでもエマサンが落ちて来たらツカマエマス!」
「そん時は頼んだそ」
ポールに話を合わせるエマ。
しかし、顔は半笑い。
単純な奴だな......
誰が落ちるかってんだ......
まぁ、いいか。
それじゃあ、そろそろ行くとしましょう......
「よっしゃあ!」
エマは一声気合いを入れると、まずはほんの少しの凹みに左の指を掛けた。そして一気に身体を引き上げる。
「あらよっ!」
見事身体は宙に浮いた。
次は、更に上の凸部に右指を引っ掛け、再び身体を引き上げる。
「あらよっ!」
そして更に
「あらよっ!」
「あらよっ!」
「あらよっ!」
掛け声と共に、次々と上昇を重ねていくエマ。ロッククライミングをやってるだけの事はある。実に軽やかな身のこなしだ。
それに対し、
「ハッ、ハッ、ハッ、」
地上で両手を大きく広げ、反復横跳を繰り返すポール。冗談でやっているのかと思いきや、顔は超真面目だ。
そんなポールの様子を流し目で見届けるエマ。
あいつはもしかして、おバカ?
張り詰めていた神経の緊張が、途端に緩みを見せる。
すると、
パキッ!
なんと指を掛けていた出っ張りが、体重を乗せた途端に見事折れ落ちた。
「あらら......」
エマの身体は、万有引力の法則に乗っ取り、一気に地球へと引き寄せられて行く。
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