第二十六章 サバイバル

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 ※  ※  ※ 「美緒さん、油断するなよ」 「解ってるわ」 鋭い眼光を放ち続ける圭一と美緒の二人。構えたライフルの銃口は、先を歩く秋葉大地の背中に向けられていた。 「この野郎......腹の中じゃ一体何考えてるか解ったもんじゃ無いからな」 「危なくて、後ろなんか歩かせられないわ」 まだ若かった大作を、まんまと餌に使い、肉食植物の包囲網を脱した秋葉大地...... 確かに、あの方策を取らなければ、そう簡単には抜け出せなかっただろう。 また大作の命を犠牲にして、二人がその恩恵を受けた事も事実だ。 しかし『EMA探偵事務所』の辞書には、仲間を陥れて、一部の人間だけが助かるような戦術は表記が無い。 そもそも人道においても、そんなやり方は許されるものでは無かった。 大地曰く、 それを『合理的な方策』などと呼び、あたかも正論であるかのようにカモフラージュしてはいるが、集団行動を基本とする人間社会において、それは裏切り以外の何物でも無かった。 裏切り行為を行った者は、必ずまたその過ちを繰り返す。圭一と美緒が、今大地に対して最大限の警戒心を抱いている事は、むしろ自然な成り行きと言えた。
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