第二十六章 サバイバル

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無言で一人先頭を歩く大地。 実際のところ、この男は何を考えているのか全く解らない。実に危険な男だ。 一瞬足りとも、油断出来ない。 そんな緊張感が二人の全身を取り巻いていた。 そして歩き続ける事30分...... 目の前には、10メートル程度の隆起した土地が現れた。 自然の悪戯なのか、人為的に施されたものなのかは解らないが、それは砂利で積み上げられた丘のような形状だ。 すると大地が、実に呑気な事を口走る。 「おお、もう12時じゃ無いか。そろそろランチにしよう」 丘の手前で突然足を止めた大地。 この男の用意したランチなど、危なくて食せる訳が無い。毒でも盛られたら最期だ。 「俺達にそんな悠長な時間は無い。とっとと先へ進め」 圭一がムッとした表情で、大地の提案をあっさりと退ける。 「まあ、そう言うな。腹が減っては戦が出来んとよく言うだろ」 圭一の反応などはまるでお構い無し。笑顔でビニールシートを地べたに広げ始める大地だった。 まさか、こんな切迫した状況において、ピクニックでも始めるつもりなのだろうか。奇怪この上も無い行動と言えた。 「だったらお前一人で食ってろ。俺達は先に行く」 圭一は大地に振り返る事もせず、丘とも言えるその場所をツカツカと登り始めた。 ステップを踏む度に、大小の砂利がビニールシートに崩れ落ちて行った。
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