第二十六章 サバイバル

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「弱点だと? だったら色仕掛けの話なんかより、そっちの方が先だろ」 「圭一さんは黙ってて。それでその弱点とは?」 美緒は自慢の黒渕メガネに手を掛けながら、熱い視線を大地に送っている。これは美緒の集中している時のお決まりポーズとも言えた。 「目だ」 「目? 目を攻撃すればいいって事?」 「違うね。奴等の視力は驚く事に、日中は4.0~5.0。生身の人間の二倍以上だ。 ところが、夜になって暗くなると、0.01を遥かに下回る。殆ど見えていないのと一緒だ。 だから奴等は、この『大要塞』の明かりが最も多く漏れるこの場所を、生きる場所として選んだ訳だ。 とは言え、夜になれば『大要塞』の明かりも絞られ、目も見えなくなる。だから夜はすんなりここを通れる訳だ。夜まで待てればの話だがな」 「夜までなんて待てる無いじゃない!」 「俺達は夕方の5時までに、最北の『焼却塔』で娘を救わなきゃならないんだ。そんな悠長な事は言ってられん!」 美緒も圭一も、刻々と過ぎていく時間に焦りを抑え切れなかった。 もう既に昼を過ぎてている。タイムリミットまで5時間を切っていた。 とにかく行動を起こさなければ、桃が焼却炉で焼かれるのをただ待つだけとなる。 桃を救出する事が、いかに困難な事なのか......痛感せざるを得なかった。
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