第二十六章 サバイバル

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「楽しんで来てね」 美緒は一言。 笑顔で送り出す。 心が通じ合った二人に、多くの言葉は必要無かった。 右手に斧。 左手にロープ。 圭一の装備はたったそれだけ。 しかもそれらは武器では無い。 次の道を切り開く為の『神器』 何かに例えるなら、そんな言葉が一番相応しかろう。 元より戦うつもりなどは無かった。戦わない訳だから、武器などは必要無い。 更に、逃げる事がミッションとなるこの状況下においては、軽装こそが何よりも最大の武器となる。 よって、銃や刃物などを持つ事は、正に愚の骨頂であり、生兵法と言わざるを得なかった。 ファーストミッションは、たった100メートル限りの徒競走。 とは言え、ここでしくじると、せっかく持って行った斧もローブも使わず仕舞いで敗北が確定する。 1回ポッキリの大博打。 そう言わざるを得なかった。 やがて......機は熟した。 圭一はゆっくりと顔を上げる。 その時、未来を見据えた二つの目は、炎のように燃え上がっていた。 その様子は、正に赤いローブを目の前にした闘牛。生死を分ける戦いの始まりだ。 そして...... 賽は投げられた。 「しゃあ!」 圭一は気合い一発。 果敢に丘を駆け降りて行く! もう後戻りは出来ない。
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