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「楽しんで来てね」
美緒は一言。
笑顔で送り出す。
心が通じ合った二人に、多くの言葉は必要無かった。
右手に斧。
左手にロープ。
圭一の装備はたったそれだけ。
しかもそれらは武器では無い。
次の道を切り開く為の『神器』
何かに例えるなら、そんな言葉が一番相応しかろう。
元より戦うつもりなどは無かった。戦わない訳だから、武器などは必要無い。
更に、逃げる事がミッションとなるこの状況下においては、軽装こそが何よりも最大の武器となる。
よって、銃や刃物などを持つ事は、正に愚の骨頂であり、生兵法と言わざるを得なかった。
ファーストミッションは、たった100メートル限りの徒競走。
とは言え、ここでしくじると、せっかく持って行った斧もローブも使わず仕舞いで敗北が確定する。
1回ポッキリの大博打。
そう言わざるを得なかった。
やがて......機は熟した。
圭一はゆっくりと顔を上げる。
その時、未来を見据えた二つの目は、炎のように燃え上がっていた。
その様子は、正に赤いローブを目の前にした闘牛。生死を分ける戦いの始まりだ。
そして......
賽は投げられた。
「しゃあ!」
圭一は気合い一発。
果敢に丘を駆け降りて行く!
もう後戻りは出来ない。
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