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生身の人間の耳には、狂気にしか感じられなかったあの雄叫びも、恐らく彼らのコミュニケーションの手段であったに違いない。
それを証明するかのように、リーダーと思われる1体のウェポンが、
「ガガーッ!」
再び雄叫びを上げる。
そしてその目は、丘の上に向けられていた。
すると、
リーダーを残した他の4体は、突然体を翻し、一気に駆け出していく。
彼らが向かった先......
それは、事もあろうか丘の上だった。
「ちょっとあんた、どうすんのよ? 奴等こっちに向かって来てるじゃない」
バンッ、バンッ!
美緒は威嚇射撃を続けながら、血相を変えて大地に叫び掛ける。
「まあ、これも想定内だ。安心しろ。ここは一旦引くとしよう。あの岩場の裏まで行っちまえば、要塞の光は届かない。奴等が我々を見付ける事は出来んだろう」
「解ったわ」
美緒は即座に銃口を下げると、大地と共に丘を駆け降りていった。
そして一気に岩場の裏へと避難していく。
「圭一さん......何とか底無し沼までたどり着いたみたいだけど。大丈夫なのかしら?」
美緒の表情は不安に満ちている。
「彼の身は大丈夫だろう。しかし腰に巻いたロープを、外灯の柱に縛り付ける時間は無かったようだ。恐らく要塞の外にはもう出て来れんだろうな」
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