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※ ※ ※
「息を潜めろ。奴等の聴覚と嗅覚は生身の人間の10倍以上だ」
大地は丘の手前。岩影で静かに呟く。
「だったら『大要塞』の照明が落ちても、ここを抜けれ無いんじゃないの?」
美緒の顔は不満に満ちている。
「抜き足、差し足、忍び足の要領だ。照明が落ちたら、とにかく奴等の動きを見ながら摺り足で進む。それ以外に道は無い」
「丘の向こうの平地は300mも有るのよ。10分で通り抜けられるのかしら?」
「それはやってみなけりゃ解らん。赤外線スコープはちゃんと掛けてるな。おっと......近付いて来たぞ。口を閉じろ」
「......」
「......」
ガサッ、ガサッ、ガサッ
ガサッ、ガサッ、ガサッ
水を打ったような静けさの中、人間ウェポンの足音がすぐ近くを通過していく。
暗がりとは言え、まだ『大要塞』の灯りは煌々と照らし出されている。
顔の識別まではつかぬにせよ、そこに人間が居る事くらいは気付くであろう。
圭一が底無し沼に飛び込んでから、早3分が経過。未だ『大要塞』の照明が落ちる気配は無い。
まさか圭一さんの身に?!
一抹の不安に駆られる美緒だった。
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