第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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 ※  ※  ※ 『樹海温泉深緑荘』 そこでは、『マンタ洞窟』で繰り広げられている壮大なバトルが、まるで嘘のような静けさに包まれていた。 夕日が差し掛かり始めたその頃、宿自慢の露天風呂では、今日も自家源泉から涌き出た湯が、訪れる各々にこの上も無い癒しを与えていた。 そんな湯に浸かりながら、一人の年若き女性が不安げな表情で語り掛ける。 「『頭』......いいんですか? また本部から催促が来てますよ。さすがに無視はどうかと......」 「恵麻ちゃん、いい湯だね。気持ちいいでしょう」 そんな『青』の忠告が、耳に入っているのかいないのか? エマの離散以降、『玄武』の『頭』を張る『赤』は恵麻なる幼さ子に、優しく語り掛けた。 「うん、気持ちいいよ、おばちゃん。連れて来てくれて有り難う。でもお母さんも一緒に来て欲しかったな......」 一瞬『赤』の顔に影が掛かる。 しかしそれを打ち消すかのように、直ぐ様、幼さ子の頭を撫でながら再び説く。 「お母さんはね......お仕事で暫く帰れないの。おばちゃん達で我慢してね」 「うん...... 」 おばちゃん...... 20を超えたばかりの『赤』には、ちょっと相応しくない称号とも思える。 しかし母親の知人の女性ともなれば、それが秘境の地『富士国』であっても、総じて子供から『おばちゃん』と呼ばれる習わしに違いは無いようだ。
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