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「恵麻ちゃん。そろそろ出ようか? のぼせてきたでしょう」
「恵麻、喉乾いちゃった」
「そう、じゃあ、お風呂出て何か飲もうか」
「うんっ!」
『赤』が恵麻を抱き上げ、湯船から出ると、美女戦士の4人もその後に続く。
小雪交じりの夕暮れ時。西日が差し込む回廊を歩いていると、5人の火照った身体が徐徐にクールダウンしてくる。
恵麻が湯冷めして風邪でも引いたなら、亡き『黄』に申し訳が立たない。
『赤』は浴衣の上に羽織っていた自身のちゃんちゃんこを脱ぐと、恵麻の肩に優しく掛けた。
「暖かい?」
「うん」
恵麻の父は、恵麻が生まれて間もなく家を飛び出した。
一体今ごろ、どこで何をしているのか?......
誰一人知る者は居ない。
『娘の事をよろしく......』
『赤』にそう託し、
『解った』
躊躇なく応えた『赤』
この世を去った『黄』との約束を、簡単に反故など出来る訳も無かった。
子育ての経験など皆無の『赤』にとって、恵麻と接する事は、死闘を演じる事よりも難儀と言えた。
離れの露天風呂と本館を繋ぐ風情ある回廊を通り抜けると、やがて頭上には『ラウンジ』の看板が遠目に見えてくる。
しかし、その『ラウンジ』のネオン看板には明かりが灯されていない。
ラウンジって言ったら、やっぱ夜か......
この時間じゃ、まだやってない?
『赤』は半信半疑のまま扉を開けてみる。
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