第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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「うわぁ、美味しそう!」 恵麻は思わずジュースに飛び付こうとする。 すると『赤』は即座にその行動を制し、自らがストローに口を当てた。 美味しい...... よもやとは思ったが...... 『赤』は毒味を終えると、膨れっ面の恵麻にジュースを譲る。 「ずるーい、それ恵麻のだよ!」 「ごめん、ごめん」 バーテンダーはそんなやり取りが目に入っているのかいないのか? 彼女らに背を向けたまま、澄ました顔でシェイカーを振っている。 カシャ、カシャ、カシャ...... 「『頭』、この者はあの時の......」 『青』が小声で『赤』の耳元で囁き掛ける。 「解ってる。まぁ......面白いじゃないか。我々に危害を与えるつもりなら、わざわざ自分の身分を明かす必要も無かろう」 「まぁ、確かに......」 『青』は視線をバーテンダーから離さない。警戒の手を緩める事はなかった。 「はい、あなたのお口に合うかどうか? お試しあれ」 バーテンダーは、『赤』の目の前に真紅のカクテルを差し出した。 「このカクテルは?」 「はい、『マンハッタン』。女王のカクテルとも呼ばれています。あなたのイメージにぴったりのカクテルです。 人の上に立つ者は、常に厳しい判断を求められる。時には英断を下す事もあるでしょう。それが宿命であるが故に......悲しいかな......」
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