第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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それまで『赤』は下された命令に対し、何も考える事なく、ただ柔順に従ってきただけと言えよう。 それは『赤』に限った話では無い。全てのアマゾネスにも言える事だ。命令に対して疑問を抱くような事は皆無と言っても良かった。 そんな『赤』が、今、ただの殺人マシーンから人間の心を取り戻そうと必死にもがいている。 そのきっかけは他でも無い。 エマとの出会いだった。 あの人は自分の命を犠牲にしても、この無邪気な恵麻を助けようとした...... そしてあの人は、スパイだった珠なる尼を自らが盾となり、銃弾から守ろうとした...... その理由はなに? 依頼された仕事だったから? 誰かからの命令だったから? いや、違う...... 他人の指図で行った行動では無い。自らの意思で救うと決めた事だ。 それに比べて自分達は、1度足りとも自らの意思で行動した事があっただろうか? 多分...... 無かったような気がする。 フウッ...... 『赤』は今、口にしたばかりの真紅のカクテルの如く、頬を赤く染め、大きなため息をついた。 やがてバーテンダーは、次なるカクテルの披露を始める。 「はい、これは『コルコバード』と呼ばれるカクテルです。 静かに舞い降りた青い夜......そんな色をしていませんか?  きっとあなたは、このカクテルを飲み干す前に、行くべき所がお有りなのでは無いでしょうか。青い夜が訪れる前に......」
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