第二十八章 『白虎』VS『玄武』

13/47
前へ
/1040ページ
次へ
鮮やかな青いカクテルが置かれた場所...... それは他でも無い。『青』の目の前だった。 『青』は無言でカクテルに口を付ける。 「美味しい......」 「有り難うございます」 そのように礼の言葉を述べたバーテンダーは、既に次のカクテル製作に着手している。無駄な動きは全く無い。 「お前達......『富士国』の為に、命を捨てる覚悟は出来てるか?」 突然口火を切る『赤』 「何を今更......」 『青』曰く。 「聞くだけ野暮な話です」 『緑』曰く。 「既に命を捧げています」 『紫』曰く。 「そうか......」 深い森の中に、ひっそりと佇む由緒正しき一軒宿。 そんな宿の一角に存在するラウンジの窓から差し込む夕日は、見る度にオレンジ色の度合いを増していった。 いずれオレンジ色の太陽は、森の木々に隠れていき、やがて夜が訪れるのであろう。 「はい、次は『ミドリミモザ』。贅沢なオレンジジュース『みもざ』に、メロンリキュールを加えた実に贅沢なカクテルです。 この美しい緑の色合い......正に『樹海』の森を見ているようです。 このまま誰かが立ち上がらなければ、いつか必ずこの美しい森も枯れ果ててしまう事でしょう。是非もない......」 そのようにしみじみと語るバーテンダーは、緑に輝くそのカクテルをカウンターの上に置いた。 目の前に置かれたカクテルを見詰める戦士...... それは......緑だった。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加