第二十八章 『白虎』VS『玄武』

14/47
前へ
/1040ページ
次へ
「続けてもう一品『ブルームーン』......鮮やかなパーブルは、深い歴史の証。あなた達の故郷のようです。 この暖まった店に冷えたカクテル......当然の事ながら、グラスは涙を浮かべます。 私には民の涙のように見えてしまうのですが......気のせいでしょうか......」 バーテンダーはもの悲しげな表情を浮かべながら、涙を浮かべたグラスを『紫』の前に差し出した。 『緑』と『紫』の2人は一瞬互いに顔を見合わせる。バーテンダーの滑らかな舌さばきに面食らっている様子だ。 もはや、詩人の域に達している。 やがて二人は、ゆっくりと味を楽しむかのように、カクテルを飲み干していった。 すると、 「マスター」 突然『赤』が顔を上げる。 「いかがされましたか?」 バーテンダーは手を休める。 「率直にお聞きします。あなた達は我々の敵ですか? それとも味方ですか?」 『赤』の目がキラリと光る。 味方と答えたら、どんな反応を示すのか? 敵と答えたなら、どんな反応を示すのか? そんな事を考える間も無く、バーテンダーはサラリと答えた。 「それはあなた達次第......私がお答えする事ではありません。 少なくとも我々の『頭』は、あなた達『富士国』の皆さんを敵にしたいとは思っていません。現時点の話ではありますが...... ただあなた達が敵と見なすのなら、私共の『頭』は、容赦無くあなた達を滅ぼすでしょう。それが簡単に出来る力を持ったお方です。 また逆に『富士国』が戦うべき本来の敵にあなた達が挑むと言うなら、我ら『頭』は、命に替えてでもあなた達の事を守り抜く事でしょう」
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加