第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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『焼却塔』...... それは5階建て程の高さ。 全体が煤で汚れたその細長い建物は、正に『塔』。 薄暗い『マンタ洞窟』の中で、一種異様な雰囲気を醸し出している。 屋上には銭湯紛いの煙突が立ち上がり、それは洞窟の外へと繋がっているようだ。 この場所で、一体何人の罪無き人々が焼かれたのだろう...... ももの救出はさる事ながら、これ以上犠牲者を増やす訳にはいかなかった。 許せない! 美緒の目は怒りに燃えている。 美緒は言わずと知れた極神島の血を引きし者。感情に怒りと言う調味料が加わると、ニトロを搭載したドラッグカーの如く暴走する。 「さあ、突入するぞ! こらっ、お前! いつまでも食ってんじゃ無いよ。とっととそこの玄関の扉ぶち壊せ!」 旨そうに兵士の肉をあさっていた一人の人間ウェポンが、美緒の一喝を喰らうと慌てて我に返る。 「ヒェー! リョウカイ、タイショウ」 いつの間に大将と呼ばれるようになった美緒は、最強兵士達に一躍号令を下した。 『焼却塔』の大きな正面玄関には、当然の如く頑丈な施錠が施されている。 バコンッ! 美緒に怒鳴られたウェポンは、力任せに扉を殴り付けた。 すると扉は、まるで飴細工の如くグニャっと曲がり果て、一瞬にして人一人が通れるだけの空洞が出来上がる。 彼らからしてみれば朝飯前......その程度の仕事に過ぎなかった。 美緒と5人の人間ウェポン達は、怒濤の如く『焼却塔』の中へとなだれこんでいく。
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