第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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『焼却塔』の中が静まり返ると、美緒は満を持して塔の中へと乗り込んでいく。 いざ中に入ってみると、予想通りと言えばそれまでの景色が広がっていた。 もはや解説の必要は無い。口の周りを真っ赤に染めたウェポン達が、皆、満足気な表情を浮かべ肩で息をしている。 いとも容易く、ここに『焼却塔』の1階を制圧した瞬間だった。 やっぱ......私の思い過ごしかしら? 決して油断した訳では無かった。 ただこの時、美緒の心の中に『敵は弱い』と言う固定観念が、完全に住み着いてしまった事は否定出来ない。 ほんの数分前...... エマ達はたった3つの手榴弾で百戦錬磨の『朱雀』を壊滅させた。 勿論、力量的にエマ達の方が勝っていた事は間違いないのだが、それよりも、エマ達が先に戦場たる場所に陣を張っていた事が何よりも大きい。 もし『朱雀』よりも後にエマ達が『仮想の街』に辿り着いていたのなら、あそこまで一方的な戦いにはならなかったであろう。 そして...... 美緒達は知るよしも無かった。 今この上の階で、 あの美戦士が陣を張り、ウェポン達の到来を待ち受けている事を...... 舐めるんじゃないよ...... 早くおいで、化け物達...... 「うっ、うっ、うっ......」 一際指の長い美戦士は、手足口を縛られた健気な少女に、不気味な笑みを浴びせ掛けていた。 フッ、フッ、フッ......
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