第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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反動でウェポンの身体はエビの如く跳ね上がり、銀の矢は弾き飛んだ。 更に電流は、手摺の線路を渡り、瞬く間に最終駅へと到着する。 「うわあっ!」 突然龍貴の顔はシワくちゃに。 そして遂に...... ももからその手を離した! 「今だっ!」 美緒は千載一遇の好機とばかりに全速力で走る。そして我が子を抱き上げた。 「ももちゃんっ!」 しかし、 慌てて声を掛けるも返事は返って来ない。 まさかっ! こんな小さな幼子に、突然高電流を浴びせ掛けた訳だ。平気でいられる訳が無い。 しかし、そんな美緒の心配を他所に、小さなももの心臓は、バクバクと力強くリズムを刻んでいる。 良かった...... 気絶しているだけだ。 ところがそんな安堵も束の間、敵なる龍貴は百戦錬磨の強者だ。そこらの愚兵とは訳が違った。 「おのれっ!」 見れば、身体を痙攣させたまま、何と矢を弦に掛けているでは無いか! そして今にも、その矢を撃ち放とうとしている。 美緒は突然我に返ると、即座にももを抱き上げ、出口へと向かって一目散に駆け出す。 「逃がさんっ!」 龍貴は全身の力を込めて弦を引き、そして遂に美緒の背中を射程に捉えた。 「死ねっ!」 ビュー...... 遂に銀の矢は弦から放たれた。そして一直線に美緒の背中へと吸い込まれていく。 残念ながら...... 照準に狂いは無かった。 力強く放たれたその矢は、恐らく美緒の細い身体を容易く貫通し、ももの心臓を破裂させる事は必至。 もはや逃れる術は無かった。
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