第二十八章 『白虎』VS『玄武』

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「あれっ...... どうしたの?」 突然ももが目を覚ました。キョトンとした顔で目を丸くしている。 そんなももは...... なんと未だ母なる美緒に、しっかりと抱き抱えられていた。 銀の矢が背中に突き刺さり、事切れた者...... それは優しき母では無かった。 「何でもないわ。さぁ、もうちょっとの辛抱よ。お母さんと一緒にここから抜け出そうね」 「うん!」 美緒は立ち止まる事なく、そして後ろを振り返る事も無く、ただ走り続けた。 最期の力を振り絞り、自らの身体で盾となってくれたリーダーウェポンの顔を頭に浮かべながら...... 彼らは野獣の身体と化しても、心まで野獣と化してはいなかった。 美緒と出会った事をきっかけに、完全に人間の心を取り戻したと言ってよかろう。 それを証明するかのような最期の一幕だったに違いない。 美緒はすでに姿が見えなくなった彼らに、心で語り掛けた。 真っ当な道に戻った君達に、私は最大限の敬意を評する...... そして身を呈し、私達を守ってくれた君達に謝意を示すと共に、君達の身体を改造した秋葉秀樹を必ずや誅する事を約束する。どうか見守っていてくれ...... 有り難う...... お前達の事は一生忘れない...... 最強にして、最愛の戦士達へ...... 美緒は風で涙を飛ばしながら、尚も勇敢な彼らの顔を頭に浮かべつつ、『焼却塔』を後にしていった。
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