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そんな青年の猟奇的な行動に対し、いち早く反応したのは連れの女だった。
突然バネ仕掛けの人形のごとく立ち上がり、声を荒げて言った。
「あたしちょっと行ってくる。あなた逹はすぐにボスに連絡! いいわね!」
「おい、行くって一体どこ行くんだ?!」
「あの子放っておいたら絶対死ぬ。助けないと!」
そう言い放つや否や、連れの女性は青年の影を追い掛け、風神のごとく走り去って行った。
あの子は間違いなく......
「自分にはこ......ろ......せ......な......い」
そう言っていた。
声は届かなくても、唇の動きがそう語っていた。
恐らくズボンの右ポケットに隠し持っていたものは......刃物? いや銃かも知れない!
走っている時のあの顔......
あれは間違いなく死を決心した時の顔。
自分には解る。
なぜなら......
同じ経験をした事があるから。
走る......ただ走る。
タッ、タッ、タッ......
タッ、タッ、タッ......
※ ※ ※
その頃、青年はピロティを抜け、闇雲に走り続けていた。
特にどこかを目指していた訳ではない。
ただ逃げ出したかった。
あの場から離れたかった。
青年は走る。なおも走る......
猟奇的な表情を浮かべながら。
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