第一章 追いつめられて

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そんな青年の猟奇的な行動に対し、いち早く反応したのは連れの女だった。 突然バネ仕掛けの人形のごとく立ち上がり、声を荒げて言った。 「あたしちょっと行ってくる。あなた逹はすぐにボスに連絡! いいわね!」 「おい、行くって一体どこ行くんだ?!」 「あの子放っておいたら絶対死ぬ。助けないと!」 そう言い放つや否や、連れの女性は青年の影を追い掛け、風神のごとく走り去って行った。 あの子は間違いなく...... 「自分にはこ......ろ......せ......な......い」 そう言っていた。 声は届かなくても、唇の動きがそう語っていた。 恐らくズボンの右ポケットに隠し持っていたものは......刃物? いや銃かも知れない! 走っている時のあの顔...... あれは間違いなく死を決心した時の顔。 自分には解る。 なぜなら...... 同じ経験をした事があるから。 走る......ただ走る。 タッ、タッ、タッ...... タッ、タッ、タッ......  ※  ※  ※ その頃、青年はピロティを抜け、闇雲に走り続けていた。 特にどこかを目指していた訳ではない。 ただ逃げ出したかった。 あの場から離れたかった。 青年は走る。なおも走る...... 猟奇的な表情を浮かべながら。
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