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妖怪相手に何が出来るわけでもなし。
足掻き方も分からん。
自分の運の悪さに、諦めるより外にない。
「お前はよくても俺はダメなの! 俺には明日大事な用事があるんだよ! お前が勝手に決めて諦めるんじゃねぇー!」
めっちゃテンパってるなー、こいつ。あははー。
…………自分よりテンパってるヤツがいるとかえって冷静になるな。
ーーにんげん?
声とも音ともつかない不思議な呼び掛け(問い掛け?)に、僕ら二人は固まった。
ど、どうしたらいいんだ?
困惑して何も言えずにいると、別のモノの言葉があった。
ーーでも ちがう けはい する
僕らを囲んでいる中の一人(一匹?)がこちらを凝視した。まじまじと見られる。その台詞が彼らの好奇心を煽ったらしく、妖怪たちがざわめき始めた。僕らに詰め寄り、その距離を縮める。
ーーどれどれ
ーーほうほう
ーーこれまた
ーーおやまあ
「ーーひ」
その視覚的刺激に悲鳴が喉を駆け上がるが、身体の強張りが影響し、声が詰まった。
「あや? 人間がいる」
よく通る声が聞こえた。
妖怪たちがそちらを見た。妖怪たちが視線を移した先は僕らの後ろ。確かに声はそこからしたがーー
僕は振り返った。
そこにーー女の人が立っていた。
「なんでここにいるの、君たち」
と、彼女。
僕らを見下ろす格好だ。
異形の中に立つ見慣れた普通の人間。
それはとても異様だったけれどーーその異様さに構うどころではなく、
「たーーーー助けてください」
そう言うのがやっとだった。
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