変わらない道標

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その晩、灯を泣かせてしまったことが母さんの耳に入っていた。 なんでも灯の母親が謝りの電話を入れてきたらしい。 それでも俺からすれば迷惑極まりないことで。 『そんな子に育てた覚えはないんだからねっ?!』 付き合う度、彼女に泣いて電話をかけられる、もう一人の息子はなんなんだと聞き返したくなったけど止めておいた。 次の日、気まずそうに目を合わせない灯に罪悪感を覚えていた、けど。 夜、一緒の塾に通い始めた美咲に灯を泣かせたことを尋ねられ、好き勝手に言いふらしていたのかと思ったら灯に感じていた負い目は跡形もなく消え失せた。 それより、ニ年に上がって、もうすぐ2ヶ月。 最近、"あること"に頭を抱えている。 「しずー」 …っ。 分かっているのに、振り向いてしまう性。 「奏人!避け…」 ドンッ… 海斗の忠告も虚しく、額に思いっきり追突してきたバレーボール。 床に落ちてから呑気にポンポンと跳ねている。 どんなに注意を払っていても、気を抜けば、この有様。 今月に入って何度、このような事故を起こしたのだろう。
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