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『しずー』
『はいっ』
勝手に脳内で再生される声。
実は、皆にからかわれるよりも酷なことがある。
それは本人を思い出して、無意識に比べてしまうことだ。
しずの方が、声が細いな、とか。
しずの方が、肌が白いな、とか。
しずの方が、目が大きいな、とか。
可愛いと男バスと男バレから密かな人気を誇っている静ちゃん。
小柄で確かに小動物みたいな可愛らしい子ではあるが、しずに優るところなんか一つも見つからない。
でもそんな事を思う行為自体が、自身で傷口をえぐっているも同然で。
…もう本人の声すら忘れかけているというのに、本当何をしてるんだか。
「ああー…」
椅子に踏ん反り返り、少しでも発散しようと発声練習のように唸り出す。
マジで会いたい。
ああ、もう本気で限界なんだって。
蓄積された欲が、はち切れそう。
どれほど経てば、ストーカーの時効が消えるのだろう。
いつまで我慢したら、会いに行くことを許されるのだろう。
毎日その事しか考えてない。
でも無表情の事を思い出すと気がそがれて、また胸の奥が疼く、を繰り返していた。
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