変わらない道標

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妹に好きな人が出来る兄の心境は、こんなにも辛いものなのか。 ずっとその疑問を解決出来ずにいる。 ちょうど晩飯を食べに帰ってきた、参考になる人が一名。 一人でこんなに悶々としていても仕方がない。 もしかしたら何か打開策なるものをくれるかもしれない。 …よしっ。 ノックして、返事がかえってきたところでゆっくりと扉を開けた。 風呂あがりの彼は、多少濡れた髪をそのままにデスクでパソコンをひらいている。 「どした?」 「あー、…いや、ちょっと聞きたいことあって」 多分、仕事をしている。 何も考えずに来たことを後悔した。 「んー?」 顔をあげた彼は、形の良い、薄い唇で弧を描いた。 このままグダグダした方が邪魔になる、即日結審が一番だ。 「もし優香に好きな人とかできたら…苦しくなる?」 「…はっ?」 人生で初めて見たと思う。 いつもスマートでカッコいい兄のこんなにも呆気に取られた顔。 お前、頭大丈夫?って今にも聞いてきそうだ。
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