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昼休み。
一緒に弁当を食べていた亮介は、前触れもなく尋ねてきた。
「なに、いい事でもあった?」
「えっ?」
顔色がいい、とはとてもじゃないけど言い難い今日の顔。
鏡に映った目の下のクマには、自分でも驚いたというのに。
「…なんで?」
「なんとなく」
すき焼きの牛肉を箸でつまむ彼の口角が、心なしか上がっているように見える。
なんでいつもピンポイントで、当ててくるんだろう。
「…うん。ちょっと、あった」
本当はちょっとどころの騒ぎではない。
でも正直に言うのはなんだか気が引けて、慎むことにした。
「それは良かった」
「…あざっす」
「おう」
いつも思うが、こいつってなんか不思議。
野次馬みたいな海斗と違って、無闇に人のテリトリーに踏み入れるような事は決してしない。
なのに千里眼かと疑ってしまうほどの鋭さを持ち合わせている。
そんな奴と一緒にいて心地良く感じるのは、少し兄貴に似てるから、だと思う。
物静かとまではいかないが、あまり自分の事も話さないし、なかなか謎に包まれてる。
でも信頼できる何かが確実にあって、頼れるとか、実は共通点が多かったりする。
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