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「私、4組なんだけど、知らない…よね?」
放課後、ひと気の少ない美術室前。
目の前のショートカットの女の子と面識は一切ない。
「うん、ごめん…」
「あ、ううんっ。全然っ。えと、実はね。その、古賀くん、今好きな人とかいる?」
怯えと焦がれの入り混じった視線に、心がざわめき立つ。
思い出したくないあの光景は、いつからこんな風に浮かんでくるようになったのだろう。
「古賀くん?」
「あ、ごめん。…えと、好きな人はいないけど」
「そっかっ。あのね、私ね、入学した時からずっと好きだったの。それでもし良かったら、私と…」
恥ずかしくて、その先が言えないのか。
俯いてしまった彼女の耳は、紅潮していた。
その姿にまた、想像をしてしまう。
そしてひどい嫌悪感に駆られて、灼けるような痛みや苦しさに耐えるのみだ。
…彼女も、こんな風に想いを告げるのだろうか。
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