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「しずちゃん、ちょっとお願いっ」
「はいはいっ、今行きますっ」
脳は摩訶不思議な物だ。
会えると分かったら、反応もしなくなる。
ああ、やっと会える。
本物のしずに会える。
やばい、本当にやばいって。
だってあれから……え?
可笑しな数字が過ぎり、慌ててちゃんと指折って数えてみるが、間違いはなさそうだ。
「奏人っ?!」
…しまった。
驚愕のあまり、思いっきり高いトスを上げてしまった。
ボールを取りに行ったタケちゃんに謝りつつ、内心、最長記録を叩き出してしまった自分を褒め称えていた。
まさかの、…一年。
1ヶ月で愛理ちゃんから利歌ちゃんって子に方向転換した海斗と比べたら、俺は神の領域に入っているのかもしれない。
…でもあんなペーパー野郎と比べても、全然嬉しくないな。
ああ、とにかく早く終われーっ。
『…なぁ。今日の奏人、ちょっと変じゃない?』
『うん…』
『ほら、また一人で笑ってる…』
『…あれが普通だったんだけどな』
『え?なんか言った?』
『別になんでもないよ』
一生懸命モップで乾拭き清掃をしていた俺は、端っこで海斗達に討論されていたことも、それを優しく見守っている亮介の存在にも、もちろん気付くはずがなかった。
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