変わらない道標

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待ちに待った、伊藤家訪問。 あれほど楽しみにしていた、のに。 「あんた、もしかして緊張してる?」 「…大丈夫」 見慣れた門をくぐってからずっと、破裂しそうなくらい、心臓が暴れている。 くすくす笑い出す優香を睨んでいると、ご機嫌そうな美咲が横まで来て。 「今日奏人くんまで来てくれるとは思わなかったーっ」 「来るよ」 会えるんだから、と心の中で補足する。 石畳の路を歩きながら、なかなか大きい庭を見渡して、探すのはもちろん彼女の姿。 「あれぇ?いないねぇ?」 …?! いきなりわざとらしい声で、左右を確認する仕草をする隣の優香。 美咲の前で何を言い出すんだと口パクで訴えるが、全く気にしてくれない。 「優香さん、誰探してるんですか?」 「あっ、いや、こいつ」 「大志くん!」 …はっ? 美咲に見えない角度で、ニヤリと憎たらしく笑った優香。 我が姉ながら、なんて意地悪な奴なんだ。 でも、待てよ。 タイシって…どっかで聞いたような…。 「大志っ!」 思案していると、おばちゃんがまたその名前を呼んで。 開いた家の扉から見えたのは、玄関先で自転車に乗っている小さい男の子。
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