変わらない道標

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「降りそうだな」 「どばっと降っちゃって~花粉もろとも流して~」 鮭のおにぎりを咀嚼しながら、空を見上げていた亮介。 最近流行っている曲を替え歌で唄っている海斗は、また鼻水が出てきたのかクリームパンを膝に置いて鞄を弄り始めた。 確かにどんよりと濁っていて、鼠色の大きな雲々に覆われていた。 『…うわー、これ雨降りそう』 『雲、鼠色してるもんね』 遠い昔の記憶を遡らなくても、自ずと響いてくる懐かしい声。 じんわりと胸に広がる甘い痛みを、どれほど味わったのだろう。 「どしたの?」 「え?」 「いや、ため息。また出てた」 「…マジか」 潤んだ瞳で呆れながら指摘されたのは、最近頻繁にしてしまう、無自覚な行為。 不味いジュースを再び口に運び、また一つついてしまっていた。 「おっ!」 突然、表情をパァっと明るくさせた海斗はそそくさにポケットからケータイを取り出して。 画面を見るなり、だらしない笑いを浮かべる。 「愛理ちゃんがさ、今日」 「はい、黙れ」 「なんで!モテない男の惚気くらい聞いてくれたっていいじゃん!」 新学期早々、同じクラスの子とメールを始めた海斗。 俺と亮介は一組、海斗だけが五組。 教室が離れているため、愛理ちゃんがどんな子なのかも知らないが、とにかく可愛いだのいい感じだのと騒いでる。
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