52人が本棚に入れています
本棚に追加
学校生活にも一通り慣れ、友達関係も安定してきたからなのか。
2年になってから、そんな話をするのは海斗だけではなかった。
クラスでも部活でも、男だけになれば必ずといっていいほど出てくるのは、女子の話題。
誰が可愛い、誰々が付き合っている、誰の身体は…といった下世話なことまで。
明白な変化、彼達も女子を"異性として"見るようになっていた。
だからこそ、思わずにはいられない。
みんなは日に日に成長をしていっている、のに。
俺だけ、取り残されてるのだと。
「てか奏人どうなの?いい子とかできてないわけ?こう、ドキッとするようなさ」
何人に聞かれたのか分からない、この質問。
正直、答えることに、戸惑いさえ感じる。
「…できてない」
同級生に比べて、成長が激しく乏しいのかもしれない。
彼達が抱く"ときめく"という感情が、未だによく分からないから。
晩御飯を食べ終わり、自分の部屋に戻ってベッドに横たわった。
瞳を閉じて、今日告白してきた子を思い出す。
憧憬を秘めた、儚げに揺れる瞳は、あの図書室を彷彿させられる。
『じゃれあっててね、ちょっと面白かったの。ほらあれ』
夕焼けに照らされた、端正な横顔。
桃色の唇が楽しそうに笑ってる。
『この消しゴムね、しずが消しゴム忘れたからたっちゃんがくれたの。あ、たっちゃんっていうのは友達ね』
向けられた相手は、幼い彼女が友達と呼んでいた、…無表情。
最初のコメントを投稿しよう!