変わらない道標

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学校生活にも一通り慣れ、友達関係も安定してきたからなのか。 2年になってから、そんな話をするのは海斗だけではなかった。 クラスでも部活でも、男だけになれば必ずといっていいほど出てくるのは、女子の話題。 誰が可愛い、誰々が付き合っている、誰の身体は…といった下世話なことまで。 明白な変化、彼達も女子を"異性として"見るようになっていた。 だからこそ、思わずにはいられない。 みんなは日に日に成長をしていっている、のに。 俺だけ、取り残されてるのだと。 「てか奏人どうなの?いい子とかできてないわけ?こう、ドキッとするようなさ」 何人に聞かれたのか分からない、この質問。 正直、答えることに、戸惑いさえ感じる。 「…できてない」 同級生に比べて、成長が激しく乏しいのかもしれない。 彼達が抱く"ときめく"という感情が、未だによく分からないから。 晩御飯を食べ終わり、自分の部屋に戻ってベッドに横たわった。 瞳を閉じて、今日告白してきた子を思い出す。 憧憬を秘めた、儚げに揺れる瞳は、あの図書室を彷彿させられる。 『じゃれあっててね、ちょっと面白かったの。ほらあれ』 夕焼けに照らされた、端正な横顔。 桃色の唇が楽しそうに笑ってる。 『この消しゴムね、しずが消しゴム忘れたからたっちゃんがくれたの。あ、たっちゃんっていうのは友達ね』 向けられた相手は、幼い彼女が友達と呼んでいた、…無表情。
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